[本] ウィリアム・ヒョーツバーグ『ポーをめぐる殺人』

 ミッキー・ローク主演『エンゼル・ハート』の原作、『墜ちた天使』で有名な(と言うよりそれしか知らなかった)ウィリアム・ヒョーツバーグ。その1994年の作品、『ポーをめぐる殺人』を。
 1920年代のニューヨークで、『モルグ街の殺人』『マリー・ロジェ』『早すぎた埋葬』といったポーの作品をなぞった殺人事件が発生。その魔手が世紀の奇術師フーディーニと、訪米中のコナン・ドイルに迫る。心霊主義を否定するフーディーニの前には本物の霊媒師が、超自然の存在を信じるコナン・ドイルの前にはポーの亡霊が現れ、話はますますオカルトじみた展開を見せるが……。
 ポー、ドイル、フーディーニ、他にもデンプシー等々の歴史的人物が次々と登場する、賑やかなB級小説。一見するとミステリーかとも思ったが、実はミステリーともホラーともファンタジーともつかない、妙な方向に発展するのが、『墜ちた天使』(ハードボイルドとオカルトの混合作品)のヒョーツバーグらしい。全体としては終盤に若干に尻すぼみ感が残るものの、時代背景や主役のフーディーニ、コナン・ドイル共にとても魅力的に描かれており、心霊現象への見解で対立していた二人が手を組んで事件の解決に当たるくだりは非常に面白かった。ポーの短編をあらかた知っていて、『墜ちた天使』が好きな人であれば文句なくお勧め。

ウィリアム・ヒョーツバーグ 『ポーをめぐる殺人』

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