[本] ウォルト・ベッカー『リンク』

「極端ないいかたをすれば、それはまるで、自動車の全部品をばらまいておけば、部品がひとりでに組みあがって、数百万年もたつころには、まともに走るヒュンダイの車になるというようなもんじゃないか」
「まともに走るヒュンダイ? それ、矛盾語法じゃない」

ウォルト・ベッカー『リンク』

 猿から人へのミッシング・リンク、現代技術では作りえない古代遺跡、そして宇宙人の化石と小型核融合炉──そんな、ややトンデモ系のネタを散りばめた冒険小説、『リンク』。『神々の指紋』や形態形成場理論など(まあ90年代末の作品なので)、怪しげな豆知識が唐突に説明口調で挿入されるのが何となく微笑ましい。作者はマイケル・クライトンを狙ったのかも知れないが、ウンチクが本当に薄っぺらいので、どちらかと言えばコメディとして捉えるべきだろう。事実、海外でも “action/adventure comedy” 扱いされている
 全体として、面白くないわけではないのだけど、あらゆる面で平均点過ぎて、記憶に残りにくい出来となっている。ただ、ハリウッドで映画化すれば立派な「消費用」娯楽作品になりそうだ。ディズニーが映画化権を買い取っていて、そろそろ撮り始めるようだが、まあ悪い映画にはならないように思う。

ウォルト・ベッカー 『リンク』

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