内製を超えるのは信頼関係とモノ作りへの情熱

最近、内製、内製、とよくブログやツイートで目にします。

まず、私は制作会社の社長なのでポジショントークになりますが、内製ってそんなに良いものですか?、外製も捨てたもんじゃないですよ、というのが今回のエントリーの主旨になります。

よく言われる内製のメリットというのはそのまま外製のデメリットになりますが、ここでは一つ一つ簡単に考察してみます。

1) 外製だとまともに作ってくれない

頼み方を間違っているか、頼む会社を間違っています。初期開発が数十人月以下のモノならハートレイルズに頼みましょう。必ずまともに作ります。

真面目な話、モノの完成にも届かないような場合には、どこかのプロセスで誰かが不都合な真実 (リスクの現実化など) に成す総べなく目をつぶっていたか、元々の予算とスケジュールがおかしかったかのどちらかです。目をつぶっていたのが制作会社ならそんな制作会社にはニ度と頼まないようにしましょう。また、元々の予算とスケジュールがおかしかったというのは、制作過程で仕様の変更が多発せず、制作会社の見積りをそのまま採用していたのであれば言うまでもなく制作会社の非、そうではなく、仕様の変更が多発しても何ら調整を取らなかったのであれば頼む方の非です。そういう場合には頼み方を考え直した方が良いでしょう。

誠実な制作会社であれば、作るモノが当初と変わらないのに、自社の都合で当初の予算とスケジュールの約束を破ったりは決してしません。そればかりか、誠実かつ良心的な会社であれば、当初の予算とスケジュールに収まる範囲であれば、仕様の変更にも柔軟に対応してくれるでしょう。ここで問題となるケースは、仕様の変更が多発しているのにも関わらず、当初の予算やスケジュールを調整せず、プロジェクトの破綻のリスクが表面化しているのに何ら有効な手が打たれないことです。これは頼む方と頼まれる方のコミュニケーションでしか解決できず、どちらかが耳を塞いだり強硬な態度に出ればプロジェクトの破綻は現実化します。

少し話が脱線していますが、ことウェブ系の制作、特に新規事業系については、初めから最終形が見えているプロジェクトなど存在しないと言って良いと思います。仕様の変更、などと一々堅苦しく呼ぶようなレベルではなく、変化が日常的に発生するようなプロジェクトでは、請負などではなく委任で契約した方が頼む方と頼まれる方の、お互いのためです。先のコストの話にも繋がりますが、日常的に発生する変化に対して毎回見積り ⇒ 承認 ⇒ 制作 ⇒ 納品 ⇒ 検収などという冗長なプロセスを回すことは、新規事業系では最も優先すべきスピードを殺し、かつ無駄なコストを発生させます。ここで委任で契約すると完成責任が、瑕疵担保責任が、などと心配される向きもあると思いますが、ハートレイルズのようなモノ作りに対してプライドを持っている制作会社は、契約形態が請負だろうと委任だろうと完成責任や瑕疵担保責任を完全に放棄したりはしません。頼む方と頼まれた方が信頼関係を持ち、お互いがプロジェクトの推進に対する責任と情熱を分かち合えば、スピードとコストを最適化できる余地が多いのは明らかに委任での契約です。(請負での契約を否定しているわけではありません。スピードとコストを多少犠牲にしてでも安心を担保したい、という場合はあると思います。また、仕様の変更が多発しないことが明らかなプロジェクトではこの限りではありません。)

2) 外製だと言われたことしかしてくれない

頼み方の問題です。どんどん提案してください、的なことを言っておきながら、それを受け入れる体制がなく、予算とスケジュールの柔軟性がないのであれば、予算とスケジュールに収まる範囲での提案しか通常できないでしょう。また、大抵の提案は仕様の変更を伴いますから、請負での契約でかつ予算とスケジュールが硬直した中では、どうしても自由な発想の元で提案するというのには無理があります。委任での契約、もしくはアジャイル的な進め方であればそれも可能ですが、まず、頼む方でも仕様が完全に固まっておらず、その策定に制作会社の提案を期待するのであれば、契約や進め方をある程度柔軟なものにするべきです。また、提案というレベルでもなく、文字通り 「言われたことしかしてくれない」 のであれば、それは頼む会社を間違っています。

3) 内製の方がコストが安く上がる

これは頼む方と頼まれる方の会社の人件費にもよるので一概には言えませんが、案件をそのまま下請けに再発注しているような会社に発注すれば、当然間接的なコストが積まれます。(ハートレイルズでは基本的にそういうことはしていません。) また、膨大なドキュメントを求めたり必要以上の瑕疵担保責任や賠償責任を求めれば、必要以上にリスクを回避するためのコストが積まれることになります。ここで重要なのは、95% のモノを制作、担保するのに必要なコストが 1 だったとして、100% のモノを制作、担保するのに必要なコストは 2 だったり酷い場合には 5 だったりするということです。もちろん、制作会社のプライドにかけてなるべく 100% に近いものを限られた予算とスケジュールでも納めるべきですが、仮に内製するとして自社の社員にも負わせないような成果物と責任を制作会社に求めれば、(少なくとも一時的には) 内製よりもコストが高くつくのは当然です。逆に言えば、外製であっても事前にしっかりと成果物と責任に対する合意、コミュニケーションが取れていれば、納得のいくコストで納得のいくモノを制作することができます。

また、とりわけウェブ系や新規事業系に限って言えば、100% を求めてガチガチの契約で制作会社を縛ったりするのは全くのナンセンスです。100% に到達する前に元の前提が変わることが多々ありますし、というよりも、ウェブ系や新規事業系は生き物で、変化させ続けることが重要だったりするので、変に縛ってもスピードが落ちてコストが増すだけで何も良いことはありません。制作会社がきちんと仕事をしてくれるかどうか不安だから契約で縛り、その結果として本来払う必要のない安心料を払う、という構図は今も昔も健在のように思いますが、そういう頼み方をしている会社は早く信頼できる制作会社を見つけて、制作会社が自社の一員に見えるような、そういうパートナーシップを結ぶ努力をした方が良いと思います。

最後に、これは常識的な話ですが、内製するというのはつまり、人を雇うということです。制作を生業としている会社ならともかく、そうでない会社がフルに内製できるリソースを維持し続けるというのは、結果として外製よりもコストが高くなります。餅は餅屋という言葉がありますが、使いどころ、頼み方を間違えなければ、外製が内製よりも有効に働くケースは多々あります。

4) 外製だと作りっぱなしで改修がうまくできない

作るまでは良いが、作った後の面倒を見てくれない、というのはよく聞く話ですが、それは制作会社次第です。請負、委任、レベニューシェア、などなど、契約の形態によらず、作った後の面倒を見てくれる制作会社は (多分) たくさんあります。例えば、細かい改修毎に見積り、発注を繰り返すのが面倒、という悩みがもしあるとすれば、それは単にそういう契約にしているからで、委任にしたり、レベニューシェアにしたり、チケット制にしたりして、見積りとか発注とか細かいことを言わずに、自社の一員に見えるような形で制作会社を機動的に動かすことは十分可能です。ハートレイルズでもクライアントによっては Skype や github などで常にホットラインが繋がっており、改修の依頼への即日対応などは日常的にあります。(ただし、こうした体制を構築するのにはやはり先に信頼関係が必要です。)

5) 外製だと社内にノウハウが溜まらない

外製した部分のノウハウが溜まりづらいのは確かに事実です。が、何から何までノウハウを社内に溜める必要はないでしょう。制作したモノは放っておけばいずれ陳腐化しますし、多かれ少なかれ、部分的にでも作り直す必要性にいずれ駆られます。そうした際に必要になるのは制作そのもののノウハウではなく、ビジョンやゴールを定義、共有する力だったり、ビジネスの仕組みを考える力だったり、制作を管理できる力だったりします。制作を生業にでもしていない限り、制作そのもののノウハウで制作会社に勝てるはずがありませんし、また、勝つ必要もありません。ただ、信頼できる制作会社を見つけて、任せれば良いのです。上から下まで全て内製、社内に全てのノウハウを、というのはスピードやコストを度外視した考え方であり、重要なのはモノのコアとなる部分をしっかりと社内で抑えた上で、上手に制作会社とパートナーシップを結ぶことです。

以上、まとめると、内製を超える外製は、書面上の契約を超えた、信頼関係とモノ作りへの情熱から生まれます。制作会社は文字通り制作のエキスパートです。モノ作りへの情熱、プライドを誰よりも持ち、確実に、スピーディに働きます。そんなエキスパートを効率的に活用するには、まず、使いどころ、頼み方をケースバイケースでよく考えて、契約で縛り付ける、という発想ではなく、共に責任を分かち合ってプロジェクトを推進する、という発想の元で望むのが良いでしょう。そして、頼む側と頼まれる側の信頼関係が、余計な保証、安心を担保するための無駄を省き、お互いのパフォーマンスを最大化させるのです。これは何も社内と社外の間柄に限った話ではなく、社内のスタッフの間柄でも同じことですよね。

ということで、現在、ハートレイルズでは新しいパートナーを募集しています。約束は必ず守り、貴社の制作部隊と言って差し支えないような、協調した働きを見せます。以前に外製して苦い思いをされた会社さんも、新規事業に燃える会社さんも、小さい案件も大きい案件も、もし良い制作会社を探されているようでしたら、ぜひ一度ハートレイルズにご相談ください。



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